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溺れる恋は藁をも掴む
第15章 カルアミルクとビール
一通り水族園を見て回ってから、
観覧車にも乗った。
二人だけの空間の中、
上を目指してゆっくりと上がってゆく景色を眺めながら、
箱の中で私達はキスをした。
下の景色が段々小さくなり、
頂点までやってきた。
縮図の景色を見渡しながらも、
唇はあなたを求めた。
ロマンチックになりたかった。
恋人になろうと必死だった。

私はあなたの居心地の良い女になろうとしていた。
本当にあなたが好きだったからよ。

水族館の帰り道にあなたの家に招かれて、
夕食を一緒に食べる事になったよね。
帰り道にスーパーで買い物もしたわ。

彼氏の家で料理をするって幸せな事なの。

彼氏なんて居ない頃、
そういう妄想で盛り上がれたりもしたんだもん。

あなたの部屋に上がる。
部屋は綺麗に片付けられていて、
あなたの真面目な性格が滲み出ていた。

私は台所を借りて、
鯖の味噌煮とほうれん草のおひたしに、
ワカメと豆腐の味噌汁を作る。

メニューも男の人が喜びそうなものを
チョイスしたのは計算のうち。
手料理作戦で、
あなたのハートを摑みたい下心は隠す。


あなたは喜んで、
「華ちゃん、料理上手いね。
いいお嫁さんになれるよ」
無意識で言った言葉。

女はね、男の何気ない一言が尾を引いたりするのよ。

あなたに好かれたいから、
自分の心の中に棲む真っ黒な疑惑にも、
目を逸らした。


あなたの家で、御飯を作り、一緒に食べるのは、私が彼女だからよ。


食事が終われば、
恋人達は当然そういう雰囲気になった。




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