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溺れる恋は藁をも掴む
第15章 カルアミルクとビール
私は惨めな気持ちで家に帰り、
声を殺して泣いた。

『自分の身体が醜いから‥‥
誠治さんは最後まで私を抱けない』
そう思うと、
悔しくて惨めでどんどんマイナスのオーラに包まれ、堕ちるとこまで堕ちた。

それでも…
恋愛偏差値の低い私は縋る。

バカみたいに本心を隠したメールなんかを送る。

家に無事に着きました。
水族園楽しかったな。
有難う御座います。

明日から仕事ですが、
年末までやりきりましょうね(^^)
クリスマス楽しみにしてます(≧∇≦)


顔文字が滑稽に見える。
誠治さんを失いたくないだけで、
本心なんてそこにはない。
形を無理に修正しょうとする、
心が篭らないメール。

うまくいかない、
行き場のない恋心。

一層、嫌いになれたら楽だった。
誠治さんに踏ん切りつけられる強い女だったら、
どんなに楽だったか?

セックスが上手くいかないくらいで、
嫌いになんてなれなかった。
そんなちっぽけな事くらい、乗り切れると自分に言い聞かせた。
セックスがなくても上手くやってゆけると願いながら‥‥


私はあの時、
恋している自分に溺れていたんだ。
藁を掴む気持ちで縋った。


でもそれは‥‥‥
恋を失いたくない弱虫が、現実に目を背けた、理想論に過ぎなかった。


恋は一人でも出来る。
見返りを求めないなら。

恋人は互いの気持ちがすれ違えば、
波打ち際の砂の城に過ぎない。


砂の城を固めても、
打ち寄せてくる波は容赦なく崩していく‥‥








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