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溺れる恋は藁をも掴む
第15章 カルアミルクとビール
雪のような白いコートを羽織り、
あなたから貰った空色のマフラーを巻いて、
1%の望みに懸けたいと思った。
どんなにメールが冷たく感じても、
この日を覚えていてくれたあなたに、
好きという気持ちは100%を保っていたから。

待ち合わせの店の前で、
あなたが来るのを五分前から待った。

あなたは時間丁度に店に来た。

クリスマスムードが漂う店内。
あなたが予約してくれた、
少し高そうなフランス料理の店。

席に座り、向かい合わせになって、
やっとあなたの顔を見た。

『久しぶり』って言葉が出そうなくらい、
あなたに会えるまでの時間の経過を、
長く感じていた私。

あなたはコースメニューとワインを注文してくれた。

「華ちゃん、誕生日おめでとう」
ワイングラスを傾けて、
乾杯をする。

「有難う御座います。
素敵なお店ですね」

「気に入ってくれた?」

「はい、とっても」

店内は幸せそうな家族や恋人達が、
今宵のクリスマスを笑顔で祝う。

次々と運ばれてくる、
大きなお皿に、小さく綺麗に盛り付けられた料理たち。

不似合いな場所に居る気がした。
私には上品過ぎる。

交わされる会話は、あの日の事を避け、
仕事が忙しくて残業続きだったという、
言い訳にも聞こえるあなたの言葉や、

この店は、あの合コンに居たボンボン茅野に教えて貰って予約したんだ。
朋美さんも気に入ったみたいだよ。
あの二人、今日はクリスマスコンサートに出掛けたみたいだね。
有名なピアニストの演奏を聴くらしい。
なんて、他のカップルのどうでもいい話。

あの沢口に彼女が出来たらしい?
とか興味のない男の恋愛成就の話まであなたはするの。

私は料理を食べながら、
その話を笑顔を作って聞いていた。

それが二人の共通の話題だとしても、
そんな会話でしか、この時間を保てないほど、
私達は冷えていたのかもしれない。


「今日、誠治さんから貰ったマフラー、
初めて巻きました。
この日に巻くって決めていたの」

私はあなたに少しでも喜んで欲しくて言ったのよ。


「あ、そうだったんだね」
と、あなたは今気づいたような顔をしたの。

私なんて見てない証拠だね‥‥


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