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溺れる恋は藁をも掴む
第17章 溺れる
百合と過ごした時間は、
禁句にさえ触れなきゃ、
順調に進んでゆくもんだと思っていた。

百合は店に行く前に、
必ずテキストを開いて、高等学校卒業程度認定試験の勉強を真剣にしていた。
これが受かれば、百合との新しい未来がまた開かれると信じてた。

秋になり、その試験を受けて、
百合は合格した。


「私には、知らせる家族が居ないから、
晶に一番に報告だよ」
百合は嬉しそうに言う。


俺……
いつも自分の事ばっかりで、
百合の事を余り知らない事に、
その時に気づいた。


「家族が居ないって、
どういう事?」

「勘当されてんの」
百合はその一言で済ませようとした。

「どうして?」
俺は聞いてはいけない雰囲気の中、
やっぱり気になって聞いてしまった。

「親に、顔向け出来ない事してんの。
訳は聞かないで。
辛くなるから。
話せる時がきたら、
話す」

百合を見ていたら、
これ以上、聞いたらいけないと思った。
心にそれがずっと引っかかっていた。


でも、聞けなかった。
多分、これも禁句なんだって……

無理に聞けば、
百合が離れてしまう気がした。
聞くのも怖かったんだ。
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