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溺れる恋は藁をも掴む
第18章 弱くなって強くなる
寿司が届き、
それを食べながら家族団欒。

話の話題は柊の進路のこと。

「保育師になるってマジか?」

「マジ」
トロを遠慮なしに摘みながら柊が答える。

「なぜに、保育師?」

「子供好きだからさ」

「子供が好きね…」

「いいじゃない。
柊ちゃんに合ってるよ」

「でしょ!
保育師になったら、初めから先生って呼ばれるんだぜ!」

「そんな理由か?」

「俺は親父や兄貴と違って、
闘争心みたいなもんがないから、サラリーマンとか営業なんて仕事には向いてない」

「柊ちゃんの彼女も保育師目指してるんだよね?」

「そそ」

なんて、オープンな親子だ。
俺が柊くらいの時は、いちいち自分の恋愛なんて報告しなかったけどな…

「で、保育師なわけ?」

「彼女と一緒に夢を叶えるのも悪くないだろ」

「お母さんはいいと思う。
柊ちゃん優しいし、面倒見良さそうだし。
これから働く女性も増えてゆくだろうし、
いい仕事だと思う」

「まぁ、いいんじゃね?
大学とか行きながら考えても」

そう言いながら、
あの頃の自分と比べたりもした。
やりたい仕事がある柊は、
俺より大人なのかもしれないって。
彼女の影響が強かったとしても、
俺が文句言える立場でもない。


歳を取った割には生き生きしている母。
親父が亡くなった時とは比べものにならないくらい、元気はつらつな感じ。

弱いと思っていた女は、
一番強く生きてきたのかもしれないな。

時間の経過も、
人を変えてゆくんもんなんだな。





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