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溺れる恋は藁をも掴む
第6章 満月の夜に
「アキのお父さん、
いいお父さんだったんだろうな‥‥」
アキのお父さんの好物がどんどん運ばれてくる。
蛸ワサをつまみに生ビールを飲みながら、
アキは答える。
「生きていた頃は、
反りが合わなくて、
ウザく感じたよ。
親父の事は、死んでからの方が考えるようになった。
死んでからしか分からない事や、
社会に出るまで気づけない事ばっかだった」
「そうなんだ‥‥」
「完璧な人間なんて居ないだろ?
どっかズレてる所があったりして、
それが個性だったり、
その人の味になるわけでさぁ。
でも、ズレが大きく生じると、
自分では気づけないくらい、
軌道修正が出来なくなって、
挙句、周りが翻弄されるだろ?
何考えてるの?とかさ。
心の中までは見えないから、
結局、目に見えるところで、
その人を決めてしまうだろ?
共感とか出来なくなってゆくんだよね。
親父は不器用な人だった。
不器用過ぎて真面目な人だった。
上手く息を抜けない人だった。
心の行き場所を失うくらい、
真っ直ぐしか向けなかった人だったよ」
いいお父さんだったんだろうな‥‥」
アキのお父さんの好物がどんどん運ばれてくる。
蛸ワサをつまみに生ビールを飲みながら、
アキは答える。
「生きていた頃は、
反りが合わなくて、
ウザく感じたよ。
親父の事は、死んでからの方が考えるようになった。
死んでからしか分からない事や、
社会に出るまで気づけない事ばっかだった」
「そうなんだ‥‥」
「完璧な人間なんて居ないだろ?
どっかズレてる所があったりして、
それが個性だったり、
その人の味になるわけでさぁ。
でも、ズレが大きく生じると、
自分では気づけないくらい、
軌道修正が出来なくなって、
挙句、周りが翻弄されるだろ?
何考えてるの?とかさ。
心の中までは見えないから、
結局、目に見えるところで、
その人を決めてしまうだろ?
共感とか出来なくなってゆくんだよね。
親父は不器用な人だった。
不器用過ぎて真面目な人だった。
上手く息を抜けない人だった。
心の行き場所を失うくらい、
真っ直ぐしか向けなかった人だったよ」