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近づきたい
第2章 春の日
「ありがとうございました。また伺います。」

図書館の中でちょっと大きめの声が聞こえて、声の方に顔を向けた…

図書館の事務室?から一人の背の高い男性が中に声かけながら出てきていた。

閉館近い時間、人もまばらな図書館で私はその人と目が合った。

「あっ……」

目の合った男の人を見て、ビックリして目を見開いてしまった…

…よし先輩だ。

スーツを着て、髪も短めで、資料を抱えた姿。あれから6年も経っているけど、間違うはずない。

ずっとずっと夢に出てきては、私に哀しい涙を流させていた人…
12歳の私に息が止まるほどの切ない初恋をさせた人…
私のずっと好きな人…

ビックリした顔をして見つめる私を見て、その人はペコリとお辞儀をした。

あの夏の一日から一度も会ってない。たった一日一緒に過ごしただけ。6年も経ったんだもん、わかるはずないか。

制服姿の高校生…普通、知り合いにいないよね…

私の初恋、6年間心の奥で想っていた気持ち、今この瞬間に終わっちゃったかな…

なんだか顔を見てられなくて、顔を下に向けて、私もお辞儀をした。

私の横を通り過ぎて、図書館の出口に行くんだろう。私の方に向かって歩いてくる。

あと数メートルで私とすれ違う…思わず…

「……よ、よしせんぱ…い」

この距離で聞こえないかもしれない。それくらい小さい声で、ううん、声になってはいないんじゃないかと思うくらい小さい声で呼んでしまった。
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