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近づきたい
第3章 想いの日
「……送るよ」

先輩が沈黙の車の中で発進させようとギアに手を置いた。私は思わずギアに置かれたよし先輩の左手に自分の手を重ねていた…

「えっ?!」

驚いた声をあげたよし先輩…また涙が出そうになっている自分に頑張れと応援する。

「…私、よし先輩が好きだったの」

「えっ?え~!!!」

よし先輩がものすごく驚いていて、初めて可愛いと思ってしまった…。

「…よし先輩は私の初恋の人なの。たった一日だったけど、私には特別な日だった」

一度言葉にすると、全てを伝えたくなる。まだ驚いた顔をしたよし先輩をずっと見つめてはいられなくて、重ねたままの手を見つめる…

「瑞穂ちゃん…それはきっと年上への憧れなんだよ。今だって、高校生より大人だろ?オレ。」

泣かないと決めていたのに、やっぱり涙が出てしまう…上を向けないから、よし先輩がどんな顔をしているかわからない。

「送るよ…今日はありがとうね。オレは楽しかったよ。」

これで終わってしまう…確かにあの夏の私は10歳年上のよし先輩に憧れていただけかもしれない。

でも、今は違うの…再会して、よし先輩の優しさに触れて私はまた恋したの。

憧れがなくなったわけじゃないと思う…でも今は、それ以上に好きなの。もっと見つめたい…もっと触れたい…

私、もう子供じゃないんだよ。

ギアの上で重ねられた手を見て、私の中で何か覚悟のようなものが決まった。
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