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近づきたい
第9章 雨の日
私の言葉を聞いて、渡部君は腕を離してくれた。

「瑞穂ちゃん、ごめん…でも、最近の瑞穂ちゃん見る度に具合悪そうだよ。何かあった?」

私を真っ直ぐ見つめる目から逃げられない。心配そうな目が私の心の中まで入ってくるみたい…

「渡部君、私…大切な人がいるから、あなたの気持ちには答えられない。ごめんなさい。」

早口で言って、その場を離れようとした時、雨がポツポツ降ってきた。

「瑞穂ちゃん、こっち。」

渡部君は私の手を取って、建物の中に引っ張っていく。そのまま、大学内を歩いていく…

さすがに大学内で大きな声を出すわけにいかず、私は手を繋がれたまま、ついていく。

あっ、ここは渡部君のゼミの研究室。

「この研究室に傘置いてあるから、家まで送っていくよ。」

「えっ?そんなのいいよ。近いから大丈夫…」

そう言って手を離そうとしたけど、離れず、逆に抱きしめられるように手を引かれた…

ダメ!抱きしめられる!そう思って、渡部君の体を押そうとしてバランスを崩して、倒れた。

「瑞穂ちゃん!!」

倒れた私に近づいてきた渡部君が私を抱き抱えた。

そのまま、私はお姫様抱っこをされ、傘を持った渡部君は大学内を歩き出す。

ヤダ!ヤダ!恥ずかしい!離して!!
いろいろな感情が入り交じって涙が出てきた。

「渡部君、おろして…お願い…」

私の言葉を無視して、無言のまま歩いていく。

夏休みで人の少ない大学でも、私と渡部君の様子は人の目をひいた。
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