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近づきたい
第9章 雨の日
「瑞穂ちゃん、ごめん…」
大学の玄関まで来て、やっと渡部君がおろしてくれた…
私の涙に気づいて、親指で涙を拭いてくれた。
その指が優しくて、さっきまで触れていた部分がほんの少し温かい…
よし先輩には全然触れられないのに…
渡部君は今さっきまで私に触れていた…
そう思うと、遠距離恋愛をしていることが本当に哀しくて…また渡部君の前で泣いてしまった。
「瑞穂ちゃん…今日は送らせて…。」
渡部君はそう言うと、また私の手を引いて傘をさして外へ出た。
まだ小降りの雨…でも、二人で傘をさすには近づかないと濡れてしまう。
少し距離を縮めて、二人が濡れないように歩いた…繋いだ手が温かくて、よし先輩を思いながらもこの温かさに甘えたくなった。
…ダメなのに。…ダメなのに。この手を今は離せない。
大学から近い私の家にはすぐ着いた。
「瑞穂ちゃん、今日は本当にごめん。」
私の手を離して、渡部君が下を向いて謝っている。
「ううん、大丈夫…私こそ、ごめんなさい。」
ちょっとだけ渡部君の温かさに甘えたくなった自分が信じられなかった…
よし先輩とすれ違ったままなのに、何を考えてるんだろう…自己嫌悪のまま、渡部君を見る。
渡部君の肩も髪もひどく濡れていた。きっと私にずっと傘をさしていてくれたからだ…
鞄からハンドタオルを取り出して、渡部君の濡れた髪や肩を拭いた。
何故かその時間が穏やかで…一瞬、よし先輩のことを忘れてしまいそうだった。
大学の玄関まで来て、やっと渡部君がおろしてくれた…
私の涙に気づいて、親指で涙を拭いてくれた。
その指が優しくて、さっきまで触れていた部分がほんの少し温かい…
よし先輩には全然触れられないのに…
渡部君は今さっきまで私に触れていた…
そう思うと、遠距離恋愛をしていることが本当に哀しくて…また渡部君の前で泣いてしまった。
「瑞穂ちゃん…今日は送らせて…。」
渡部君はそう言うと、また私の手を引いて傘をさして外へ出た。
まだ小降りの雨…でも、二人で傘をさすには近づかないと濡れてしまう。
少し距離を縮めて、二人が濡れないように歩いた…繋いだ手が温かくて、よし先輩を思いながらもこの温かさに甘えたくなった。
…ダメなのに。…ダメなのに。この手を今は離せない。
大学から近い私の家にはすぐ着いた。
「瑞穂ちゃん、今日は本当にごめん。」
私の手を離して、渡部君が下を向いて謝っている。
「ううん、大丈夫…私こそ、ごめんなさい。」
ちょっとだけ渡部君の温かさに甘えたくなった自分が信じられなかった…
よし先輩とすれ違ったままなのに、何を考えてるんだろう…自己嫌悪のまま、渡部君を見る。
渡部君の肩も髪もひどく濡れていた。きっと私にずっと傘をさしていてくれたからだ…
鞄からハンドタオルを取り出して、渡部君の濡れた髪や肩を拭いた。
何故かその時間が穏やかで…一瞬、よし先輩のことを忘れてしまいそうだった。