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大きな瞳に映るのは
第22章 彼の思考回路

遙が私の前髪に気付いてくれるなんて。
少し気分が良くなりるんるん気分で校舎に入ると奏が通りかかった。
「 奏先輩っ! 」
『 木下さん、おはようございます。』
奏は私にニコリと笑顔を見せる。
普段は見せないその笑顔、それがズルい。
奏に駆け寄るとぽんぽんっと頭を撫でられる。
『 今週は忙しくてなかなか会える日がありません。』
眉を下げて申し訳なさそうに言う奏
「 気にしないでください、
先輩が忙しいのはわかってますよっ 」
と笑顔で返す。
奏と決まって会える日は月曜。
それ以外の日は奏の予定次第だった。
他愛もない会話をしていると
遙と麗先輩が通り過ぎた。
奏も気づいていたようだが、
あえて声はかけていなかった。
奏の話を聞きながら遙の後姿を目で追うと
一瞬だけ遙が振り返る。
どくん、と心臓が鳴る。
あの大きな瞳と視線が絡む。
すると遙は少しだけ目を細め柔らかく微笑むと
また前を向いて歩いて行った。
『 … 木下さん? 』
私が遙を目で追っていたのに気付いた奏が
少しだけ不満そうに顔を近づけてきた。
『 俺に食べられたいんですか?
… ちゃんと俺だけを見ててください。』
眼鏡の奥の瞳がギラリと光った。
「 ごっ… ごめんなさいっ 」
思わず肩を竦め一歩後ずさりすると
ははっと奏が笑った。
『 冗談ですよ。月曜、カフェでも行きましょうか 』
それだけ言い終えると再び頭を撫で、では、と微笑むと
奏は自分の教室へ向かっていった。
頭に少し残る彼の手の感触。
脳裏からは振り向いた時の彼の瞳が焼き付いていた。

