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大きな瞳に映るのは
第23章 関係
― … もうやめる? … ―
期待外れのその言葉に心臓が痛くなる。
いつもの調子で
いいでしょ!みたいな返事をくれると。
そう期待していたのに。
あの時と同じ。
初めて遙に抱かれた日。
遙を失いたくなくて。
必死でしがみついて。
遙もきっとそれに応えてくれるんだって。
でも、もしかしたら
私から離そうとしてしまったのかもしれない。
奏先輩という人に心揺られて。
キキッ … と自転車が鳴り、停止する。
ふと顔をあげれば、
そこはもう遙のアパートだった。
『 … やめたい? 』
遙は地面に足を着き振り返る様に私を見た。
本当は。やめたくなんかない。
二人の時間がもっとほしい。
遙の事をもっと知りたい。
俯き加減で首を横に小さく振る。
これが今の私の精一杯の返事だった。
『 じゃあさ。』
再び遙が口を開く。
『 とりあえず。 』
そう言うと私を自転車から降ろし
自転車を停めると
『 おいで? 』
右手を差しだし、優しい笑顔の遙。
その右手をきゅっと左手で握る。
さっきまでの不安が少し和らぎ
再び遙の温もりが掌から伝わってくる。
手を引く様に部屋にはいると
遙の匂いに包まれる。
あの幸せな空間に。
本当に、いつだって、
遙は、ずるい。