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大きな瞳に映るのは
第23章 関係
「 おじゃまします… 」
久しぶりの部屋はいつもと変わらず
綺麗に整頓され遙の匂いで満ちていた。
『 好きに使っていいよ 』
そういうと遙は足早に
ピアノの部屋に入って行ってしまった。
私もリビングに荷物を置き遙の方へ行く。
ガチャ …
静かに扉を開くと
あの音が身体中に響き渡る。
入学式の日、遙と出会った時の音が。
そして今もその曲を弾いている
―… リスト作曲、愛の夢
とても優しい音で、タッチで
一音一音が柔らかく優しく発せられる。
遙の表情もまた、優しく
少し頬が緩んでいる様にも見て取れた。
音が鳴り止むと
ふぅ、と一呼吸おいて鍵盤から手を離した。
私はゴクリと息をのんだ。
「 … すごい 、」
『 ん …? 』
いつもの笑顔に戻って少し首を傾げる遙。
『 あの日も、これ弾いてたなって 』
そんなこと私だってすぐに気付いた。
あんな綺麗で優しいメロディ
忘れられるわけがない。
『 おいで。 』
隣に置いてあった椅子をぽんぽんと叩く。
私は遙に近づきその椅子に腰かけた。
『 俺、なんかこの曲落ち着くんだよな
落ち着きすぎて眠くなるんだけど。 』
ははっと笑いながらおかしそうに話す。
それを聞いてふっ、と私まで笑みが零れる。
眠いのにあんなにいい音を出せるなんて。
「 … ずるいよ 」
『 … ん? 』
なにが?という様に顔を覗き込まれる。
チラリと遙に目をやると
大きな瞳がまっすぐ私を見ていた。