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大きな瞳に映るのは
第23章 関係
『 … あ! そういえばさー 』
何かを思い出したかのように目を見開き
楽譜を取り出す遙。そして譜面台に置いた。
表紙にはドビュッシー:喜びの島と書かれている。
難易度のかなり高い曲なのはすぐにわかった。
『 俺ドビュッシー好きなの、んで内山に卒業課題ドビュッシーにしてくれって頼んだの、そしたらこれ!難易度高すぎだろ! 』
私もドビュッシーが好きで
いろいろな曲を聴いてきたので
不満を漏らしたくなる気持ちも理解できた。
不満をいいつつも、楽しそうに話す遙。
たしかにかなりの力量を問われる曲だ。
横目で遙を見ると、目をきらきらさせている。
( 嫌ではないんだね… )
そんな風にすぐにわかる。
楽しそうな目をしているから。
『 いやでも絶対完成させてやるよ。』
「 ハルなら、できると思う 」
こんな目をしているんだもん。
きっと遙ならやりとげられるよ。
「 ハルって独学なのにピアノ上手いよね。」
『 … そ? 』
不思議そうに首を傾げる遙。
そして鍵盤に手を添えると、
指を動かし始めると同時に音が鳴る。
ドビュッシーの喜びの島だ。
( … えっ? )
慌てて譜面台の楽譜を見るが
それは表紙のまま開かれていない。
確かに喜びの島ではあるが、
どこかしら音が抜けている部分があるようにも思える。
数秒間、その音は続き、遙が手を止めた。
「 ハル。これ今日渡されたんじゃ …
『 ん? ああ、今日渡されたよ 』
「 でも … 今の … 」
『 ん? 今の? 』
少し考えるようにしてから遙は口を開いた。
『 前々から聞きこんでたから。』