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大きな瞳に映るのは
第23章 関係
タンタンッ …
包丁の音がする。
キッチンへ行くと遙がほうれん草を
刻んでいた。
高校生男子とは思えない手つきだ。
「 ハルって料理上手そう。」
『 ガキの頃から母親の手伝いしてたから 』
そう言って鍋にお湯を張る。
『 何してんの、』
ふ、と小さく笑いながら
遙を見つめる私に目をやる。
『 座ってテレビでも見てたら? 』
言われた通りリビングに置かれたソファに腰掛ける。
なんだか家族になった気分で少しだけ胸が躍る。
テレビを付け、ぼーっと流れる映像を見る。
けれどやっぱり遙の様子が気になって振り返る。
「 ハルってなんでも出来るよね 」
『 んな事ないよ 』
「 じゃあ何が苦手? 」
その問いに少し困った表情をする遙。
ピピッとキッチンで何かが鳴る。
手際よく料理を進める遙。
『 … 恋愛? 』
自嘲するようにぽつりと呟く。
その言葉に返事を返すことができなかった。
唯一彼の苦手なもの、恋愛。
わたしからしてみれば
それすらも出来ないでいた。