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大きな瞳に映るのは
第24章 秘密



「 そんなに焦らなくても 」


遙にはあと1年半の期間があるじゃない。
そんなに焦る必要ないのに。


『 や、この感じ、俺好きなんだよ 』


この感じ?と首を傾げ遙を見ると
目をきらきら輝かせながら言った。


『 今まで曖昧だった音が、はっきり見えて … こうなんつーか、ちゃんと俺自身が理解していけるこの感じ? 』

にこにこと話すその表情はとても楽しそうで。
到底練習開始直後の人間とは思えなかった。

『 俺人の気持ちとか何考えてるとか。観察してたら大抵わかるけど。音は目に見えないからさ。譜面で見ても俺自身が音にしてみないと理解できないっていうか … 』

少し考えたように俯く遙。
そしてハッとして嬉しそうに私を見た。


『 たぶん俺これ完奏したら、ちょーきもちーーー!ってなると思うんだよ! 』


勢いよく立ち上がる遙に
身体がビクリと反応する。
しかし遙の言葉があまりにも面白く
聞いているこっちまで楽しくなってくる。


『 ま!そんな感じ! 』


言いたいことだけ言い放った様子で
遙は、風呂入るわ!と上機嫌で浴室へ行ってしまった。


練習中に追いつめられる人は大抵
苦しそうな顔をしているけれど
彼は一切そんな表情を見せなかった。

終始、目はきらきらと夢見る少年の様で
欲に溢れているあの感じ。


瞼を閉じ先程の遙の表情を思い浮かべると
胸がきゅうと痛くなった。


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