この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
大きな瞳に映るのは
第12章 男と女
( あぁぁ… 本当になんて奴だ。)
苛立ちがピークに達しドスドスと玄関を出ようとする。
『 待てって、もう遅いから …
「 お邪魔しました。」
バタンッ
遙が何かを言おうとしていた。
でもそんなの関係ない。
初めて遙の言葉を遮ってやった。
「 はぁ … 」
ため息が出る、あの時本当に虜になりそうな自分に気が付いていたからだ。
急ぎ足で来た道を戻り駅へと向かう。
もう辺りは真っ暗だ。
時計の針は23:00を回ったところだった。
なんとか終電には間に合いそうだとほっと肩を下ろす。
それでも余裕を持ちたかった私は急ぎ足になる。
ドンッ
「 … った 。」
イライラしているときの癖なのか
また衝突事故を起こしてしまった。
私が下を向いて歩いていたからだ。
『 って …- あれ、うちの学校の子? 』
そう見上げると同じ学校の制服を着ていた。
変な人にぶつからなくて良かった、と一安心した。
「 … ごっ、ごめんなさいっ 」
『 俺は平気だけど、怪我とかない? 』
そういって彼は私の顔を覗き込んだ。
「 あ、大丈夫です … 本当すみません … 」
『 へー。結構かわいいね、君、1年生? 』
ぶつかってしまったことはあまり気にしていない様だ。
怒りを買わなくて良かった。
「 そ、そうです、1年の音楽科です 」
『 ふぅん … 何チャン? 』
「 木下 音夢です。」
『 音夢ちゃんかー… へぇー… 』
彼をまじまじと私の全身に目をやる
あまり見られるのは得意じゃないので恥ずかしくなる。
それにしてもなんでこんな時間に出歩いているのだろう?
少し疑問に思い時計を見るとちょうど終電が発車する時刻だった。
「 うわっ …! 終電 … 」
『 何、終電逃したの? 』
少しニヤリとして彼は私を見る。
胸元には2年生の校章バッジが輝いていた。
「 ど … どうしよう 」
とりあえず冷静に、スマホを取り出し家に連絡を入れた。