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大きな瞳に映るのは
第12章 男と女



( あぁぁ… 本当になんて奴だ。)




苛立ちがピークに達しドスドスと玄関を出ようとする。




『 待てって、もう遅いから …


「 お邪魔しました。」


バタンッ




遙が何かを言おうとしていた。
でもそんなの関係ない。
初めて遙の言葉を遮ってやった。




「 はぁ … 」



ため息が出る、あの時本当に虜になりそうな自分に気が付いていたからだ。




急ぎ足で来た道を戻り駅へと向かう。
もう辺りは真っ暗だ。

時計の針は23:00を回ったところだった。



なんとか終電には間に合いそうだとほっと肩を下ろす。



それでも余裕を持ちたかった私は急ぎ足になる。





ドンッ



「 … った 。」





イライラしているときの癖なのか
また衝突事故を起こしてしまった。
私が下を向いて歩いていたからだ。




『 って …- あれ、うちの学校の子? 』



そう見上げると同じ学校の制服を着ていた。
変な人にぶつからなくて良かった、と一安心した。



「 … ごっ、ごめんなさいっ 」

『 俺は平気だけど、怪我とかない? 』



そういって彼は私の顔を覗き込んだ。



「 あ、大丈夫です … 本当すみません … 」

『 へー。結構かわいいね、君、1年生? 』



ぶつかってしまったことはあまり気にしていない様だ。
怒りを買わなくて良かった。



「 そ、そうです、1年の音楽科です 」

『 ふぅん … 何チャン? 』

「 木下 音夢です。」

『 音夢ちゃんかー… へぇー… 』



彼をまじまじと私の全身に目をやる
あまり見られるのは得意じゃないので恥ずかしくなる。

それにしてもなんでこんな時間に出歩いているのだろう?


少し疑問に思い時計を見るとちょうど終電が発車する時刻だった。



「 うわっ …! 終電 … 」

『 何、終電逃したの? 』



少しニヤリとして彼は私を見る。
胸元には2年生の校章バッジが輝いていた。



「 ど … どうしよう 」


とりあえず冷静に、スマホを取り出し家に連絡を入れた。




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