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公衆便所から始まる
第6章 揺らぎ
「なんかユッキーがえらく控え目に心配してたけど、なんかあったの?」

店が終わってから帰ろうとすると店長にそう声をかけられたのは、それから三週間後くらいのことだった。
その言い方に、俺は有紀人さんとの関係の微妙さを思い知らされて笑ってしまう。

だけどそうだよね。
俺あれだけ思い入れてる風にしといてからなんにも言わないで音信不通だし、有紀人さんにしてみりゃわけわかんないよね。
店長も法事で俺がどうにかなるなんて思ってもないだろから説明しようがないし。

だからってこのままにしてたら、俺とのことなんてなかったことにされちゃうかもしれない。
こうやって聞いてきてくれるのも手が届きかけてる証拠だし、それはもったいない。

俺は慎重に言葉を選びながら店長に伝言を託した。
つまり、こっちの都合でなにも言わないで申し訳ないけど、いまはちょっと自分のことで頭がいっぱいでどうしても動けないので、できたら待っててほしいということを。
そしたら店長は、

「気持ちは変わってないってことだな?」

って言ってきたから頷いておいたけど。
どこまで知ってるんだろう。どこまでの仲なんだろうこの人たち。

次の日の朝方、初めてのLINEが有紀人さんから来た。
『試験勉強頑張れよ』
無難な線だけど、気遣ってもらえるってことだけで俺は父親と顔を合わす時間も無事に終われる気がして、
『ありがとう』
とだけ返した。
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