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公衆便所から始まる
第7章 それぞれの覚悟
俺がバイト先から家に帰るには、駅を挟んだ向こうのラブホ街を通らなきゃいけない。
最短距離だと。

それに遭遇したのはたまたまだった。
電車で3時間かかる実家に帰る3日前、帰宅途中に前を通ったラブホからちょうど有紀人さんが出てきたんだ。
当たり前かもしれないけど、女連れで。

0時を回ったくらいで、休憩には遅いし泊まりにはちょっと早いかなと思わなくもなかったけど、カツカツの生活じゃない大人には大した問題じゃないかもしれない。

一瞬目が合ったけど、お互い見なかったふりをした。

だよね。
待っててくれたら嬉しいとは思ってたけど、放置したのは俺の方だしその間待ってなきゃいけない理由なんてない。
俺は有紀人さん口説いてもいいとは言われけど、有紀人さんにはそれを受け入れるかどうか決める権利がある。
人間の気持ちなんてすぐに変わるもんだし、俺は有紀人さんの気持ちを考えるより俺の気持ちの整理をするのが先だ。

そう理屈では思ってもなんか裏切られたような気分になるなんて、人間って勝手なもんだよね。
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