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公衆便所から始まる
第9章 stand by me!
「輝、仰向けんなって」

気がついて顔を上げると、俺は有紀人さんにトントンと背中を叩かれていた。

「え……?」
「ん、上向き」

さす、と今度は背中を撫でられる。よかった、優しい時間は終わってなかった。

狭いベッドから落ちないようにしながら向きを変えると、微笑う有紀人さんと目が合って、それからゆっくり目にタオルがかけられる。
頭の上で床を引きずる音がして、有紀人さんが椅子に座った気配がした。

「有紀人さんて……」

首を優しく揉まれながら、俺はまだぼーっとしたまま口を開く。

「香水とかつけてたっけ……?」

バーだし。香りのするものはつけなかったはずだよな。
そう思っただけなんだけど、有紀人さんは動きを止めた。

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