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公衆便所から始まる
第7章 それぞれの覚悟
3時半。
食べ物屋の店長と話すにはいい時間だ。

「店長、お願いがあります」

誰も客のいない店のテーブルについて、俺は背筋を伸ばした。

「どした?」
「店長に得はないかもしれないんですけど、俺のこと厳しくしてください」

俺が出した結論がこれだった。

多分俺はここの社員にはならない。
だから俺を育てても、育った頃には就活でいなくなるだけでこの店としてはせいぜい俺の口コミぐらいしか得しない。
だから、ほんとにお願いでしかない。

でも、ひよっことしては年長者の好意に頼るしかない。

当分遊びはやめよう。スマホも格安プランに切り替えよう。
いままでも誰かと連んだりサークル活動してたりってわけじゃなかったから、これは俺個人でどうにでもなる問題だ。
講義のない時間は前もってバイトと勉強に振り分ける。

で、バイト代がある程度貯まったら車の免許を取る。
情報系の資格も取る。
卒論をその過程で考える。

つまり、大学時代を努力のための体力みたいのをつける期間にしようと思ったんだ。
人間楽な方にいくのは簡単だから。いつでもできるから。

店長は顎に手を当てて考え込んだ。

「━━親御さんがそうしろって?」
「違います」
「じゃあ……年上の彼女でもできたか?」
「……違います」

嘘は言ってないぞ。若干変な間が空いたけど。
それをどう思ったのか、

「ふぅん……」

腕を組み直した店長は、

「わかった、相談しとく。決まったらLINEするわ。試験終わるまでにはな」
「よろしくお願いします」
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