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公衆便所から始まる
第7章 それぞれの覚悟
こないだバイト代をもらった事務室を借りて閉店作業が終わるまで俺は寝させてもらった。
体力的にオールも不可能じゃないし、いままでだったらそうしていただろうけど、いまは無駄はしたくない。

だけど熟睡はできなかったみたいで、有紀人さんが掃除に入ってきたりパソコンやりに来たりしたら意識が戻ったし、揺り起こされた時にはそっこーで目が覚めた。

「輝起きてたの?」
「いや……寝てた」
「ふぅん。……まぁいいや、お待たせ。行こう」

俺たちは店を出ると、線路沿いの道を黙って歩いた。
7月の5時は、けっこう明るい。
有紀人さんが持って出てきたお茶のペットボトルの入ったビニール袋がガサガサと鳴る。
それを有紀人さんは俺と逆側の手に持ち替えて、空いた手で俺の手を握った。

ここは変な反応しちゃだめなとこだ。
ただ自然に握り返せばいい。
そう思うのに、俺は有紀人さんから顔をそむけることしかできない。
こんな明るいところで、早朝のお日様の下で、俺はこの人としたことを思い出してる。
これからすることを想像してる。
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