この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
月の吐息
第3章 雲隠れ

エレベータが開いて、真っ先に、例の窓際の席を確認する。
胸を撫で下ろした。
健二はいない。ちょっとホッとしていたら、あの若いウェイターが案内に来る。
「いらっしゃいませ。あ、お久しぶりですね」
「こんばんは」
時刻は9時過ぎ。
生演奏よりも、今日はバーテンさんに後日談を聞きたいだけだったし、奥側のカウンターに案内してもらった。
薄暗くて、入口付近やピアノの方のお客さんは良く見えないけど、それが、逆に居心地がいい。
「お久しぶりです」
このテノール。
良かった。今日は、イケメンは奥側対応なのね。
癒やされながら軽く会釈すると、穏やかな微笑みに自然と笑みが零れた。
「今夜は、どうされますか?」
「こないだの、あれが飲みたくて、来ちゃいました」
「マリブサーフですね」
さすが、イケメン。ちゃんと記憶しててくれてるなんて、完璧すぎる。
ちょっとニヤけながら、カクテルグラスがかき混ぜられるのを見てる。
あんな風に、かき混ぜられたいな。長い指で。
―――中に、入れたい・・・
「!」
「どうぞ」
「あ、・・・あ、どうも」
「何か?」
「い、いえいえいえ、何でもないです」
もはや、バカ健二どころの騒ぎじゃないわ。
これ、健二の呪いかも。
急に思い出すとか、こないだの映画より、ホラーだし。

