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月の吐息
第5章 Moon River
微笑んでバーテンを見つめる美月の胸元には、銀のネックレスが光る。

どこか幸せそうな美月に、首をかしげてから、5杯目のグラスを口に運んだ。

俺としては、奥のバーテンの方が気になるけどなー。

美月は、華やかな男の方が好みなんだろうか?

今度、髪でも染めてみるか。





「ね、健二」

「ん?」

「あのバーテンさんも、きっと恋をするのかな」

「・・・するんじゃね?」

「だよね」

「どしたよ、急に」




美月が、振り返る。



とびきり、という名の満面の笑みだ。




「・・・なんかさ、皆、幸せになってほしいなって思って」



「・・・・・」




まったく、相変わらず、酒を飲むとガードが緩むのは悪い癖だ。




「なぁ、美月」

「ん?」

「俺との幸せは?」





その言葉に、美月が笑う。


さも可笑しそうに笑うから、不意に目を奪われた。





「分かってるって。健二は、皆じゃないでしょ?」


「?」


「一番大事な距離にいる人でしょ? 皆とは違うし」







そう来たか。








俺の隣の、俺だけの月。


もう、ずっと離さない。


ずっと離れない。






月が満ち欠けを繰り返すように、俺は美月への恋を繰り返す。






「さ、帰るよ?」

「おう」

「帰りにさ、アイス買ってっていい?」

「いいけど、食う暇ねーよ?」

「なんで?」





「美月を美味しく頂くから」





「ばか」






  *  *  *





相変わらずの俺達は、相変わらずの関係を抜けだした。





  *  *  *





相変わらずの私達は、相変わらずの関係を抜け出した。




  *  *  *








「「共に、月の川を渡り、幸せの場所を掴むために―――。」」








-Fin.-
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