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月の吐息
第4章 美月


「なんか、さ」


「ん?」


「恋じゃなきゃ、だめ、なのかな?」


「え」


「今までどおり、幼馴染じゃ、だめなの?」


「美月・・・」


「一緒に遊んだり、映画見たり、お酒飲んだり、これまでどおり、楽しく過ごすんじゃ、だめ?」




マグカップの中を覗きこむ。ゆらゆら揺れる水面に、泣きそうな私の顔が映ってる。




「美月は、今まで通りでいられるの? あんな夜を過ごして」



「・・・・・」



「なかったことにして、俺と過ごせる?」



「だって」



「また一緒に映画見に行って、バーに行って、一緒に過ごして、何もなかったことにして過ごせんの?」



「忘れるから―――」



「俺は忘れないよ?!」



「・・・・・・」



「俺は忘れない。あの時、俺が言ったことは嘘じゃない。あの時、俺が感じたことも嘘じゃない。お前が忘れても、俺は忘れない。・・・それでも、お前は忘れて過ごせんの?」



「だって・・・」



「忘れたフリして過ごしたっていいよ。俺だって長い付き合いだし、お前を騙せっていうなら騙すよ。騙してやるよ! でも、お前が誰かと付き合って結婚して、家庭を築くのを横で笑って見てろっていうのか? 逆にお前、俺が誰かと結婚して・・・・・・、あ、おい、マジかよ」



「・・・・・・」



健二が機関銃のような言葉を止めて、私の手からマグカップを取った。

ローテーブルに置くと、静かに抱きしめてくる。





「ごめん。ビビらせた」





「・・・平気だよ」





「平気、じゃねーよ。惚れた女を泣かせるとか、俺、最低だわ」





「え」













私、泣いてる。












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