この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
月の吐息
第4章 美月
「なんか、さ」
「ん?」
「恋じゃなきゃ、だめ、なのかな?」
「え」
「今までどおり、幼馴染じゃ、だめなの?」
「美月・・・」
「一緒に遊んだり、映画見たり、お酒飲んだり、これまでどおり、楽しく過ごすんじゃ、だめ?」
マグカップの中を覗きこむ。ゆらゆら揺れる水面に、泣きそうな私の顔が映ってる。
「美月は、今まで通りでいられるの? あんな夜を過ごして」
「・・・・・」
「なかったことにして、俺と過ごせる?」
「だって」
「また一緒に映画見に行って、バーに行って、一緒に過ごして、何もなかったことにして過ごせんの?」
「忘れるから―――」
「俺は忘れないよ?!」
「・・・・・・」
「俺は忘れない。あの時、俺が言ったことは嘘じゃない。あの時、俺が感じたことも嘘じゃない。お前が忘れても、俺は忘れない。・・・それでも、お前は忘れて過ごせんの?」
「だって・・・」
「忘れたフリして過ごしたっていいよ。俺だって長い付き合いだし、お前を騙せっていうなら騙すよ。騙してやるよ! でも、お前が誰かと付き合って結婚して、家庭を築くのを横で笑って見てろっていうのか? 逆にお前、俺が誰かと結婚して・・・・・・、あ、おい、マジかよ」
「・・・・・・」
健二が機関銃のような言葉を止めて、私の手からマグカップを取った。
ローテーブルに置くと、静かに抱きしめてくる。
「ごめん。ビビらせた」
「・・・平気だよ」
「平気、じゃねーよ。惚れた女を泣かせるとか、俺、最低だわ」
「え」
私、泣いてる。