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月の吐息
第4章 美月
健二の手が私の頭を撫でてる。
力強い腕に抱きしめられて、健二が、もうあの頃の少年じゃなくなったのを感じた。
どこか淋しい気持ちに、また、涙が溢れた。
「美月、もしかして、また泣いてる?」
「うん」
健二のシャツを濡らしても、涙が止まらない。
「え? 俺のせい? 俺が、抱きしめてるから?」
「違う」
オロオロする健二に、泣き笑いで否定すると、頭を撫でてた手が背中に触れた。
静かに背中を撫でられて、少し落ち着く。
「じゃ、なんで?」
「なんかね、怖くて」
不安げな健二の声に、怯えているのが自分だけじゃないと思えて、素直に言葉が口をついた。
「こわい?」
「うん。・・・・・・今までと変わっちゃうのが、怖い」
「あぁ・・・」
「健二は? 怖くない?」
「・・・・・・。怖いけど、悪くない」
「・・・え」
「こういう怖さなら、悪くないかなって思える」
顔をあげたら、笑ってる健二がいた。
ミラノに行く前と同じ、変わらない笑顔で。
私が太鼓判を押した、あの笑顔で、私を見てる。
「それに、このプロジェクトは、単独ミッションじゃないし?」
笑顔のまま、どこか楽しげに言う健二が、何故か眩しく見えた。
「お前が一緒なら、怖くても楽しい」
「・・・・・・」
「美月、俺と一緒に、このプロジェクトに取り組んでくんねー?」
ばか健二。
ずっと私に守られてた泣き虫ケンちゃんだったのに、いつの間にか、私が泣かされてるじゃない。
乾きかけた瞳が、また潤んだ。
小さく頷いた私に、健二が笑ったまま、深く口付けた。