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月の吐息
第1章 三日月
健二の顔を、ガラス越しに入ってくる外のビルの光がゆらゆらと揺れて照らす。
急に真剣な顔をされて、私の心も揺れる。酔ってるから、かな。
「健二?」
「うん・・・。あのさ、美月」
「ん?」
「俺、出張から帰ってきたらさ、正式に・・・プロポーズしたいんだ。お前に」
「・・・・・・・え」
「ずっと、ガキの頃から一緒に過ごしてきて、今更、こんなん、らしくないのは分かってる」
「・・・・・・」
「お前に彼氏がいた時だって、仲の良い腐れ縁やってて、何も言えなかったし、自分がチキンなのも自覚してる」
「・・・」
「でもさ。俺、これからもお前の隣にいたいんだ。一番、大事な距離にいたい」
どうしよう。
あまりに突然のことに、心臓が壊れそうで、健二の言葉が上手く入ってこない。
俯いたまま、曖昧に何度も頷いてるけど、突然の出来事で、頭が、真っ白になりそう。
やだな。私達、バカやってる幼馴染でしょ?
思わず、笑った。
「やだ、冗談とか」
「冗談で、こんなこと言えるわけねーじゃん」
「だって」
「いいから! 手、出して」
「え・・・」
私の言葉をことごとく遮って、健二は半ば強引に左手を掴んだ。
健二の手、震えてる。
その手が、私の掌に、小さな箱を置いた。