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講義の終わりにロマンスを
第1章 課外活動
『講義の終わりにロマンスを』
都会の歓楽街の一角。8階建のビルの7階に、その店がある。
Jazz Bar 『Dance』。
今日も、フロア直通のエレベータに、誰かが乗り込む。
■課外活動■
チャイムの音に、階段を降りる。
来客用のスリッパを玄関マットの上に置いてから、一瞬姿見で自分の格好を確認して、サンダルをつっかけた。
覗き穴から外を見れば、間違いなく、先生の姿。
私は小さく微笑んで、鍵を開けた。
「待って。この問題は、解を"判別せよ"って書いてあるだろ? だから方程式を解かせようとしてるわけじゃないんだ」
「あ、はい」
毎週火曜、先生は私に数学を教えてくれる。
高校1年で呆気無く数学につまづいた私に、両親が注いでくれた愛情は"家庭教師"という拠り所だった。
「これですか?」
「そう、その数字、そっちの公式に当てはめて」
時々、先生が私の手元を覗き込むと、ふわっと良い香りがする。
きっと香水の香り。
それから、男の人の、汗の、香り。
(・・・今日も、この香りだ)
先生の教え方は分かりやすくて丁寧なのに、
この後のことを考えて、想像して、
私は、いつも、不意の注意力散漫に襲われてしまう。
「じゃ、また来週ね。そういえば、来週は、お母さん戻るんだっけ?」
「はい」
「それじゃ挨拶しなくちゃな。真菜ちゃん、大分、レベルアップしてるし」
帰り際に片手を上げて、先生が去ってく。
扉が閉まるまで動かずに見つめてから、私は先生の履いてたスリッパを持って、自分の部屋に戻った。
都会の歓楽街の一角。8階建のビルの7階に、その店がある。
Jazz Bar 『Dance』。
今日も、フロア直通のエレベータに、誰かが乗り込む。
■課外活動■
チャイムの音に、階段を降りる。
来客用のスリッパを玄関マットの上に置いてから、一瞬姿見で自分の格好を確認して、サンダルをつっかけた。
覗き穴から外を見れば、間違いなく、先生の姿。
私は小さく微笑んで、鍵を開けた。
「待って。この問題は、解を"判別せよ"って書いてあるだろ? だから方程式を解かせようとしてるわけじゃないんだ」
「あ、はい」
毎週火曜、先生は私に数学を教えてくれる。
高校1年で呆気無く数学につまづいた私に、両親が注いでくれた愛情は"家庭教師"という拠り所だった。
「これですか?」
「そう、その数字、そっちの公式に当てはめて」
時々、先生が私の手元を覗き込むと、ふわっと良い香りがする。
きっと香水の香り。
それから、男の人の、汗の、香り。
(・・・今日も、この香りだ)
先生の教え方は分かりやすくて丁寧なのに、
この後のことを考えて、想像して、
私は、いつも、不意の注意力散漫に襲われてしまう。
「じゃ、また来週ね。そういえば、来週は、お母さん戻るんだっけ?」
「はい」
「それじゃ挨拶しなくちゃな。真菜ちゃん、大分、レベルアップしてるし」
帰り際に片手を上げて、先生が去ってく。
扉が閉まるまで動かずに見つめてから、私は先生の履いてたスリッパを持って、自分の部屋に戻った。