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講義の終わりにロマンスを
第3章 変装と女心
詩織の笑顔は優しく温かかった。
親身に自分の話を聞いてくれる彼女は、まるで理想の大人の女性に見えて、自分との違いに更なる涙が湧き上がる。
酒のせいか、気分が昂ぶっているせいか、喋る言葉に嗚咽が混じる。


ウェイターをしている彼は、自分の家庭教師だということ。
たまたまファーストフード店で外を見ていたら、先生の姿を見つけて、思わず追いかけてしまったこと。
ビルから出てこない先生を何となく待っていたが、詩織に出会って、恥ずかしくて逃げ出してしまったこと。


先生を探して、今日、初めてこんな格好をしてBARに訪れたことも、隠さなかった。


時折しゃくり上げながら、ポツリポツリと話す真菜の言葉を、詩織は急かさずに聞いている。
包み込まれた指先が、ゆっくりと温まるにつれて、真菜の心も、少しずつ落ち着きを取り戻していた。






「そっか。ハルト君、先生してるって言ってたもんね」

詩織の言葉に、真菜の胸がチクリと痛んだ。
真菜が呼べない小鳥遊の名前を、詩織は軽々と呼んでいる。

(私の知らない先生を、この人は知ってる・・・)

視線を落とした少女の様子に、詩織は首を傾げた。

「でも、どうして、泣いちゃったの? ハルト君が、BARで働いてるのを知って、驚いちゃったとか?」

「・・・違います」

真菜が瞳に涙を貯めながら首を振った。

思い出して、真菜の指が小さく震える。

「先生、私に・・・嘘をついてたんです」

「嘘?」


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