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講義の終わりにロマンスを
第5章 My Romance
「お母さん、心配するかな」
部屋の時計を見上げ、真菜がポツリと呟く。
"祝勝会で友達とカラオケオールする"とLINEしたものの、初めての外泊に、彼女は気が引けている。
「なに? 真菜ちゃん、俺よりお母さんが大事?」
布団の中、まだ一糸まとっていない小鳥遊が、急に背後から真菜に腕を伸ばす。
「ちょっ、先生ッ」
胸前に逞しい腕を回されて、思わず真菜は自分の胸元を庇った。
散々責められた先端は、少し触れられるだけで甘い痺れを感じさせてしまう。
「大丈夫。もう、しないよ」
その声が、あまりにも愉しげだから、かえって信用ならない。
(ほんとに?)
口には出さず、ちらりと背後に視線を送る。
真菜の目線に気付いているのか否か、小鳥遊は片腕をそっと下ろすと腰骨を優しく撫でた。
「それより、真菜ちゃん、腰は痛くない?」
「……はい」
本当は、少し鈍い痛みはあるが、言っても心配させるだけだし。
そう思った矢先、真菜の項に、背後から唇の攻撃が降りかかった。
「んっ」
髪を下ろせば隠れるけれど、三つ編みならば丸出しのそこに、小鳥遊が強く吸い付き、赤い痕を残す。
針でつつくような痛みに、真菜が顔をしかめた。
「真菜ちゃん、嘘は駄目だよ。ルール違反」
「え、だって…、先生だって、ルール破って……、今、私と……」
「んー? そのルール、破らない方が良かった?」
先生は、大人で、凄くて、ずるい。
大体、嘘つかないルールは、今は関係ないはずなのに。
むくれた私の頬を指先でチョンチョン突付くから、悔しくなって何か別の話にしようと思考を巡らせた。
「そういえば」
「ん?」
「先生、私の受験番号見て、何で笑ったの?」
「あぁー」
私は学んだ。
先生との会話で、主導権は取れないんだってことを。
「072って、ほら、オナニーの番号じゃん?」
* * *
未来は開かれたばかりで、まだ何の約束も無い。
付き合い始めの私達には、振り返れる甘い1日の思い出だって無い。
それでも、私には分かってる。
始まったばかりで何も無い―――
これが、私達の"My Romance"なんだってこと。
-Fin.-