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兄の狂気
第9章 永 遠
自分の長い髪を纏めあげて首を晒すと、
ちゅ、と唇を押し当てられ
「んっ」
と声を出す。
首にときどき触れる哲平の指に感じてしまう。
「はい、ついた」
「ありがとっ」
哲平に満面の笑顔を返し、
胸元で輝くネックレスのモチーフを
持ち上げて眺めてると。
「瞳、もう1つ。俺的にはそれが
一番のプレゼントなんだけど」
「あっ、うん!」
もしかして手紙かな、って思ってた。
あたしに向けて、何か言葉で伝えてくれようとしたことが
あったのかなって思ってた、けど…
真っ白な、何も書かれていない手紙の封をきり、
中身を取り出すと…
出てきたものを理解するのに少し時間をとった。
そして…
ついに耐えきれなくなって、
ボロボロと涙を零しながら哲平を見上げる。
「瞳が妊娠して、体調も子育ても落ち着いたらさ。
2人で行ってこよう?あの時の約束」
それは…お兄ちゃんに監禁される前、
2人で交わした約束だった。
「瞳の誕生日に俺がチケット買っとくから一緒に行こっか」
「ほんとに?誕生日に連れてってくれるのっ?」
「うん。約束」
その約束は…その年、またその年も叶わなかったけど。
哲平は覚えてくれていて、そして、叶えてくれた。
「当日、翔太とはな…、美音ちゃんに
子供見て貰うことになってるから」
「…っふ、うぅ…っ」
「でな?翔太達も別の日に行く事になってて、
その日は双子の面倒見ることにしてあるから。
大変だけど、2人で頑張ろう?」
こくこくと頷いて、哲平に向かって腕を伸ばす。
すると、優しく笑って抱きしめてくれた。