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兄の狂気
第9章 永 遠
某有名テーマパークの1dayペアチケット。
と、付属ホテルの宿泊券。
まだまだ先だけど、これのために
いろいろ頑張らなきゃ、って思えた。
「俺と一緒に、行ってくれる?」
耳元で囁かれる哲平の言葉。
当たり前だと、何度も首を縦に振った。
「何でこんなに、いろんなものたくさんくれたの?」
その日の夜。
2人でベッドに並んで寝て、手放しそうな意識を
たぐり寄せて聞いてみた。
「…ん?んー…瞳が隣にいてくれてるのって、
当たり前じゃないんだなって思って。
もしかしていろんな奇跡が重なって
今一緒にいれてるんじゃないかなーと思って」
「あの時の俺は、まだ若かったから。
なんの根拠もなく、ずっと瞳と一緒にいられるもんだと
思ってたけど…、いろいろあって、一旦離れてみて
改めて瞳の大切さに気付いて。俺が、これから
一生かけて瞳を幸せにしないとなって思って」
「それに、男ってさ?妊娠が分かって出来ることって
一緒に傍にいて励ましてあげることくらいじゃん?
代わってやれるもんじゃないし、妊娠の大変さ、
分かってあげたいけど分かってあげられないし」
「だからせめて、一瞬でも気休めになるようにって思って
いろいろ買ったんだ。けど…ごめんな、
ほんとはもうちょっと早く渡すつもりだったけど
チケットの予約に時間かかってしまってさ」
そんな…こと、考えてくれてたなんて。
「瞳、すっげー悪阻で辛そうだったじゃん?
その様子見てさ、命ってすげぇんだなーって。
男はさ、言い方悪いけど女の中に出すだけじゃん?
でも女はそこから着床して大きくなって、
お腹の重みや悪阻に何か月も耐えて、
産む時も耐えて。大変な行程を踏んでくれてる
瞳の傍で指くわえて見てられねーって思ったから。
一緒に頑張ろうな、瞳。
俺の子供を妊娠してくれてありがとう。
…いや、その前に。俺と出会ってくれてありがとう」