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夢想姫の逃避録
第8章 おいで
ユウガは魔法を使える。

時間を早めたり、遅めたりできるし、思っただけでドアを開けたりできるし、おまけに傷も治せちゃう。
こういうのは全部白魔法だって言ってたけど、黒魔法もあるってことだよね?

なんか……ユウガを怒らせちゃダメな気がしてきた……。
普段滅多に怒らないし、全部笑って許してくれるけども。
でもどんな魔法なのか気になる。
緋奈は食卓についてからこの話題をふった。

「黒魔法?嗚呼、あるけど……。それがどうしたの?」
「いや、あったらどんな魔法なのかなーって思って」
「……緋奈は知らない方がいいよ」
ユウガは深刻そうな顔をした。
しかも今まで聞いたことないくらい低くて冷たい声だった。

「え……なんで……?」
「ほら!オムライス冷めちゃうよ?早く食べな!あ、俺もらっちゃおうかな〜?」
深刻そうな顔をしたと思ったらすぐにいつものユウガに戻った。
たわいのない、オムライスの取り合いが始まった。
そう、いつも通り……。

でもどうしてもユウガのあの表情が気になって仕方なかった。

黒魔法っていうくらいだから、よっぽど緋奈に見せたくない魔法なんだろうな。
残酷で慈悲も何もない攻撃的な魔法なのかもしれない。
もしかしたら、その想像をはるかに超えているかもしれない。

そう考えながら食べ終わった後の食器洗いをしているとふと、ユウガがリビングにもいないことに気がついた。

あれ?どこ行ったのかな?寝室…?お風呂…?
エプロンをほどいて、ユウガを探しに行った。
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