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夢想姫の逃避録
第1章 泣かないで

とくに激痛の走る右足を引きずりながら廊下をゆっくり歩いた。
保健室行きたくないな……でも膝も血出てるしな……
嫌々ながらも足は保健室に向けて少しずつ歩みを進めた。

円堂先生は緋奈が毎日こんなイジメに遭っているのを知っている。
トイレに閉じ込められて水をぶっかけられたり、物を盗まれたり、弁当捨てられたりし続けられていたから、イジメの度がどんどんエスカレートしているって思ったらしくて、円堂先生が気付いて止めに入ってくれたり、対処してくれたりしたの。

親にも相談しようとしていたけど、親には言わないでくださいって緋奈が止めた。
知られたら面倒臭いことになるのを知っていた。
それに、面倒かけやがってどういうつもりだって緋奈に怒鳴るのが目に見えている。逆効果だと思った。

それでも円堂先生はちゃんとイジメを無くそうと動いてくれていたから、嬉しかった。

でも、裏切られた。

さっき円堂先生が愛那ちゃんを一瞥しただけですぐ視線を緋奈に戻した時点で分かった。
最近、助けを求めても円堂先生も周りの先生も助けてくれない。
きっと黙認したままなのは、愛那ちゃんの親が怖いからだ。
いわゆる、モンスターペアレントなのかな?
でも学校に乗り込んできたところは見たことがないから、もしかしたら似ているだけかもだけど。

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