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夢想姫の逃避録
第9章 消えたい
それからどれくらいの時間が過ぎたんだろう。

落ち着いて眠りに落ちているユウガの側で、緋奈はユウガの手を両手で包み込むように握っていた。
ユウガの手は相変わらず、あったかい。
こうしていると、緋奈も落ち着くことができた。

ごめんね……
こんなに苦しませちゃってごめんね……

緋奈がいなけりゃこんな事にはならなかったのに……
全部緋奈のせいだ。
ごめんね……

消えちゃいたい……
綺麗さっぱりいなくなっちゃいたい……

あっちの世界にいた頃に抱いていた苦しみが、緋奈の胸を締め付けるように襲ってきた。

ユウガは優しいから、大丈夫っていっつも言ってくれる。
緋奈が誰にも連れ戻されないようにって、ずっと黒魔法で追い返してくれていた。
しかも緋奈が不安にならないようにずっとひた隠しにしてきたんだ。
どうしようもない程の虚無感。

静寂に包まれた部屋。
スヤスヤ眠るユウガの寝息だけが微かに聞こえる。

大好きな人をここまで追い詰めてしまった緋奈自身が情けなく思えた。

緋奈はユウガの手をギュッと握りながら、そっとベッドにもたれて涙を流した。

「ごめんね……ユウガ……ゆっくり休んで……」

スヤスヤ眠るユウガからは何の返答もない。
でもそれで良かった。

ユウガが元気になってくれますように。
そう祈って、緋奈も眠りについた。
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