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夢想姫の逃避録
第1章 泣かないで
……結局、死ねなかった。
飛び降りるどころか、死ぬ勇気もなかった。
屈辱的だった。
死にたいのに死ねない自分が大嫌い。
緋奈は学校には無断でこっそり家に帰ってきた。
幸い、昼前だけれども家には誰もいない。
とりあえず痛みに耐えながらシャワーを浴びて、部屋着に着替えて膝の傷口の消毒をしたり、氷のうで青く腫れた右足首と脇腹を冷やした。
部屋に入ってベッドに横になる。
相変わらず、絶望感も憂鬱感も消えない。涙も止まらない。グシャグシャの感情。
きっとこれから学校から電話が来るかもしれない。
そう思ったら不安になってきた。
緋奈は逃避するために布団を頭まで被った。
親は夜遅くにならないと帰ってこないから、そのまま目をつぶって現実から逃げた。
「寝ている間に死ねたらいいのに…その方が幸せ…みんな嘘つき……人間なんて嫌い……人間なんて……嫌い……」
声が漏れないように、布団に顔を押し付けて、大泣きした。
壊れたラジオみたいに、何度も何度も繰り返し呟きながら……。
そして、そうこうしているうちに、いつの間にか眠りに落ちていった。