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夢想姫の逃避録
第2章 荊の剣

「……大丈夫?もう落ち着いた?」
「うん……ありがとう……」
緋奈は力無く小さく頷くと、急にユウガにお姫様抱っこされた。
「え!? え!? 待って!? え!?」
突然のお姫様抱っこに驚くと、ユウガは声を出して笑った。
「なんだ、お姫様抱っこもされたことないのか?大丈夫。俺が連れてくよ」
「どこに……?」
思わず尋ねた。
緋奈が不安そうに尋ねるもんだから、ユウガはまた笑って緋奈に言った。
「緋奈が、もう人間に壊されることが無いところ。誰も入れないし触れさせないし、況してや邪魔なんてさせやしない、2人だけの世界……。緋奈が、ずっと緋奈でいられて、ずっと笑っていられる場所。大丈夫だからな。もうあんな想い、絶対させねえからな?あんな怖い思いも、痛い思いも、寂しい思いも、悲しい思いも……もうさせないから……これからは、俺が緋奈を愛すし、俺が緋奈を守る…だから……」
「本当……?うれ……し……い……ありが……と……」
緋奈は嬉しくて泣きながらも、精一杯の笑顔でユウガに感謝の言葉を贈った。ユウガの首の後ろに回している腕に少しだけ、ギュッと力を入れた。離れないように、しっかりと。
「重くない……?重かったらごめんなさい……歩くから……」
「重くねーよ。それに、右足首とか怪我してんだろ……?俺がこうして抱えててやるから?な?」
「あ……」
緋奈は気づいてくれていたのが嬉しくて、さらにユウガにギュッと抱きついた。
そして、赤くなった頬を見られ無いように、ユウガの血が付いていない胸の辺りに顔を埋めた。
ユウガはギュッと抱きつく緋奈を見て、愛おしそうに笑いかけ、抱きかかえたまま、ゆっくりと歩き出した。
緋奈が、初めて心の底から人を信じて、笑うことができた瞬間だった。

