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夢想姫の逃避録
第8章 おいで
いつだってユウガは優しかった。
誰よりも優しかった。
穏やかで、よく笑って、口は悪いし意地悪たまにしてくるけど、愛情に溢れていた。
今までは、触れられる=暴力をふるわれるって思ってたから、大事に大切に触れられた時、抱きしめられた時、とっても安心した。
たまに緋奈が夜中、突然不安になって泣き出しても、嫌な顔一つしないで慰めてくれた。
鬱陶しいに決まっているのに、その度に何度も何度もどこにも行かないよ。大丈夫だよって言ってくれた。
どんな人間よりも優しかった。
緋奈のたったひとりの王子様。
緋奈を想ってくれる王子様。
緋奈だけの王子様。
「何作ってんの?」
「……花冠!」
「めっちゃ集中してる(笑)」
「だってすぐバラバラになっちゃうんだもん……ああ!…崩れちゃった…」
丘の花畑で2人でじゃれあって遊んでいた。
緋奈は料理もそうだけど不器用だから花冠を作るのに手間取った。
ユウガに被せて遊ぼうとしたんだけど、上手くいかないなぁ……
「俺も作ってみよう!やり方教えてよ!」
「えー!できるの?」
「できるっしょ!手先は緋奈よりは器用だしな!(笑)」
「ひどーい!(笑)」
そう言いつつも、ユウガは緋奈から作り方を教わった。
教えたはいいものの、緋奈よりも上手かったらショックだなー(笑)
お互い花を摘んで、黙々と作り上げた。
「よし!できた……♪」
苦戦しつつ、試行錯誤しながらも、緋奈はなんとか青花で作った花冠を完成させた。
ちょっと歪かな?
緋奈は横で相変わらず黙々と花冠を作っているユウガのフワフワした銀髪にそっと被せた。
被せた瞬間、ユウガの肩がびっくりしたからかすくんでいて面白かった。
「お?これ青花?可愛いじゃん!俺にくれるの?」
「下手くそだけどね(笑)よかったら!」
「サンキュ♪」
ユウガは嬉しそうに笑いながら緋奈に別の花冠を被せた。
どうやらユウガも出来上がったらしい。
ユウガの花冠は赤、ピンク、オレンジ、黄色、青花、青葉など、色とりどりの花や葉が織り込まれていた。
可愛い……緋奈にはもったいないくらい……。