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夢想姫の逃避録
第8章 おいで
「緋奈…愛してるよ……俺は緋奈を誰よりも愛す王子様であって、緋奈を人間たちから盾になってでも守るナイトでもあるんだよ…?」
「王子様…ナイト…」
「そう。俺は緋奈だけの王子様だし、緋奈だけのナイトなんだよ。緋奈は俺だけのお姫様」
「緋奈は…ユウガだけの…お姫様…?」
「そうだよ。照れくさい感じあるけど、俺はそう思ってるよ」
緋奈の耳元で、落ち着いた喋りでそう語りかけてくれた。
白馬の王子様は緋奈だけのナイトだったんだ。
そう認識すると、また涙が溢れた。

今まで、大事にされた事なんてなかった。
ずっとゴミ以下の扱いだった。
いてもいなくても同じ。空気のような扱いでもあった。
だからとっても幸せだった。胸がキュウっと締め付けられる感覚がした。
ふと見上げてユウガの顔を覗き込むと、ユウガも泣いていた。涙を流しながら、熱い眼差しで緋奈を見つめて微笑んでくれた。
同じ感情を抱いているんだと思った。
こんなにも緋奈を大事に思ってくれているんだ……。

「ユウガ……大好き…愛してる…愛してる…緋奈も…緋奈も愛してるよ…大好き…これ以上の言葉が出てこないし、分かんないよ……大好き…」
「いい…ちゃんと伝わっているから心配すんな?」
もう一度、愛に触れて、包まれて涙をこぼして小刻みに震える緋奈に唇を重ねた。
また触れるだけの優しいキス。
柔らかくて心地いい……
離れたくないってまた思ってしまった。

緋奈の左手の薬指には四つ葉のクローバーが青々と咲き誇っていた。
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