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蜜刻に揺れて
第1章 change the neworld
「お前さぁ、本当に俺のこと好きなの?本気度が伝わって来ないんだけど?」

もうすぐ付き合って1年になろうかというその男は何の前触れもなく、そう言い放ったのが先週の金曜日。

言い訳も、反論も聞かず一方的にフラれた。

仕事の拘束時間が長いだの、休みが合わないだの、取って付けた様な理由を並べられたけれど…

「可愛げがないんだよな」

それが一番堪えた。

堪えたけれど、落ち込んだけれど、27歳の日常は待ってくれない。

朝は来るし、仕事は待ち構えている。

日常に押し流されながら、失恋の傷は治ったのか治らないままなのか曖昧になっていく。

その日は今年初めてのアスターが入荷し、秋が運ばれて来たことに浮足立っていた。

「先日購入頂いた紅花に合わせても素敵ですよ」

「葉山さんのセンスは私の好みなのよね、いいわ、そのアスターとリンドウを5本ずつお願い」

「八坂さま、いつもありがとうございます」

常連さんの満面の笑顔で簡単に気分は上がる。

お手軽な性格だと自嘲するけれど、花に罪はないのだ。

常連さんと入れ替わりに店に入って来たのはエリアマネージャーの住崎 健作だった。

「お疲れさん、ちょっといい?」

健作はスタッフルームのドアを指差して中へと促した。
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