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蜜刻に揺れて
第3章 leave behind
タクシーに行き先を告げる竜に静は黙って従った。

「手でも繋いどく?」

「はっ?」

我ながら間抜けな声が出た事を恥じるよりも先に竜の手に左手を絡め捕られる。

「ついでにキスも済ましとく?」

「いっ、いいっ!」

必死に断った静を竜は吹き出して笑った。

全ては竜の手のひらで踊らされているようだ。

静は唇を尖らせながら、窓の外の景色を眺めた。

絡めた指先に心臓があるのかと思い違う程、掌がどくどくと脈を打ち、汗を掻いている気がして落ち着かない。

年甲斐もなくドキドキしているのは、相手が9secondの竜だから。

一回くらい…過ちを犯しても今迄の人生を考えれば許容の範囲だろうと自分に言い訳する。

そのたった一回が竜なら、誰も文句はないだろう。

ちらっと振り返るとバッチリこちらを見ていた竜と目が合った。

「ハナコってさぁ、律儀だよね」

褒め言葉だろうかと、静の脳裏にハテナマークが浮かぶ。

「待ち合わせ場所で、全然帰らないから」

「見てたの?!」

「10分位ね、ソワソワしながら、ケータイ見てたし、帰るってメールでも来るのかと思ってたけどちゃんと待ってたね」

「しゅ、み、悪っ!」

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