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蜜刻に揺れて
第3章 leave behind
「よく言われる」

無邪気に笑う竜の顔を見ると何故か憎めない。

特別なんかじゃない。

これはただの気まぐれ。

静は自分に言い聞かせる。

でも、繋いだ手から伝わる温もりが勘違いさせる。

マンションの駐車場で停まるタクシー。

引っ張られるようにタクシーを降り、エレベーターに乗り込んだ。

涼しい風が頬を撫でたのは一瞬だった。

密室に閉じ込められた空気は何処か張り詰めていて、静はつま先をじっと見つめていた。

この緊張が何処から来ているものなかの分からない。

「ひゃあ!な、何っ?」

急に耳に息を吹き掛けられ、素っ頓狂な声を上げる静。

その様子を声を挙げて笑いながら見つめる竜は、じりじりと壁際へと距離を詰めていく。

トンッと静の背中が壁に当たると、竜はずいっと顔を近づけた。

息を潜める静。

「キス、する?」

「だ、からっ!…ッン…っふ…」

右手を繋いだままで、竜の唇が言葉を飲み込んだ。

左手が首筋を撫で上げる。

背筋を認めたくないが確かに快感が這い上がってくる。



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