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eyes to me~ 私を見て
第48章 鮮烈なデビュー①
「……っ」
美名は涙を溢れさせ、堺に何度も頷く。
「あ――っ!泣かせたらダメよ!お化粧がっ」
志村がティッシュを手に飛んで来た。
「すいません……どうしても本番前に美名さんに渡したくて」
堺が優しく笑う。
「美名さん!今日は、綾波くんのお母様が病室でミュージックスタイルを一緒に見て下さるそうよ!
……綾波くんに聞いてもらわなくちゃ!ね?」
ペコの言葉に、美名は嗚咽を溢しながら頷いた。
「ああ――っ美名ちゃんっ……マスカラ!マスカラ!」
メイクスタッフが慌ててメイク道具を手に走ってくる。
化粧を直されながら写真を見つめる美名の顔には、悲しい陰はみえなかった。
「……やっぱ、綾波にゃ敵わないのかな……」
美名を見て、ボソリと真理が呟いたが、傍で聞いていた由清はそれを聞こえない振りをして台本に目を落とす。
間も無く本番の時刻を迎えようとしていた。