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eyes to me~ 私を見て
第50章 歌姫降臨

逸る気持ちのままに、指で触れて文字を読む。
『最高に可愛くて綺麗な歌姫。
今すぐお前を抱き締めたい。
……なんてな。
冗談だ。
いや、これ以上の事を俺は思っているぞ。
よく頑張ったな、偉いぞ。
今夜はゆっくり休めよ』
途端に、涙が溢れて身体が熱く震え出した。
「美名――?皆が外で待ってるぞ」
真理が顔を出すと、美名は涙を拭った。
「真理くん……私、今日は行けない……」
「えっ?」
「剛さんのところへ……行かなくちゃ」
「……」
美名の瞳には、もう不安定な危うさは微塵も無かった。
頬は薔薇色に染まり、唇も艶めいて、恋に燃える女の様その物だった。
(――ああ、やっぱ、俺は失恋確定だよな――)
真理は、フッと笑うと美名の手を握り締めて歩き出す。
「真理くん――?」
早足で強引に美名を引っ張り、スタジオを出て表通りで右手を上げて叫んだ。
「タクシ――――!」
一台のタクシ―が目の前に停まり、後部座席が開く。

