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eyes to me~ 私を見て
第54章 擦れ違う恋人たち

「……嫌われたものだな……」
綾波が苦い笑みを溢してハンカチで血を拭うと、美名はカッとなり、頬の頬を打った。
ジンジンとする痛みを頬と唇に感じながら、綾波は美名を見る。
小さな手も、唇も小刻みに震えて頬は紅潮し、その瞳は涙で盛り上がっている。
「き、嫌うだとか……そんな簡単な問題じゃないわよ!」
苦しげに潰れそうな声に綾波は眉を歪めた。
「美名……悪かった……頼むからそんな声で喋るな……喉を痛める」
「……心配するのはそこな訳っ!?」
美名は甲高く叫び、更に綾波を打った。
「美名……」
打たれ、よろけた姿勢のまま乱れた前髪の隙間から美名を見る。
美名は掌で顔を覆いしゃくり上げたが、泣き声はいつしか笑いに変わった。

