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eyes to me~ 私を見て
第54章 擦れ違う恋人たち

美名がバッグから手鏡を出して泣き腫らした目元を気にする様に眉を歪めているのを見ながら話す。
――今すぐその頬に触れて、泣き顔でも可愛い、と言ってやりたい――
「はい……もしもし」
『真理くん?そろそろ出てこれるかしら?……美名ちゃんは大丈夫?』
志村はわざと綾波と美名を引き離したのだ。
少しでも二人の気持ちが落ち着く様に。
真理は内心
(すっとぼけた振りをしたタヌキのオッサンには敵わねえな)
と思いながら返事をする。
「ん――、さっきよりはイイと思うぜ」
『そう……なら良かったわ。……15階の"鳳凰の間"だからね?頼んだわよ?』
「へいへーい」
真理は電話を切り、美名の腕を掴んだ。
「行くぞ、美名」

