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eyes to me~ 私を見て
第54章 擦れ違う恋人たち

美名の身体がビクリと震え強張る。
真理は、抵抗しようと胸を押してくる彼女の腕を掴み、壁に押し付けてその甘い唇にそっと触れた。
腕の力は強く美名をがんじがらめにしていたが、口付けは柔らかい羽毛の様にどこまでも優しく、その事が美名を困惑させた。
「ん、んんっ」
耳元を小さな声が擽ると、真理は唇を割って咥内を犯したい欲望にかられた。
だがひと欠片、辛うじて残っている理性でブレーキをかけ、唇を離す。
「……ごめん」
「……っ」
美名は涙目だったが、頬はほんのりとした桜色で、悲しみや嫌悪の感情は見えなかった。
恋人同士だった頃の二人のやり取りが甦ったのだろうか。
真理が思わずその頬に触れた時、エレベーターの扉が開き、同時に美名の瞳が凍り付いた。

