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eyes to me~ 私を見て
第56章 さよなら、私の

もう一つ分かった事がある。
綾波は、菊野によってある意味救われたのだという事。
綾波からしたら叶わぬ思いだっただろう。だが、菊野という女性との出会いがあったからこそ今の綾波が在るのかも知れない。
綾波は菊野と会って、初めて愛情という物に触れたのだ。
美名は菊野に嫉妬するどころか寧ろ"ありがとう"と言いたい気持ちになっていた。
烏の行水の如くシャワーを早めに切り上げ身体を拭き、秋色のワンピースをするりと身体に通し、髪を乾かして簡単にメイクをして鏡で自分の姿をチェックしてみる。
よく綾波にくるり、と回されたものだ。
その時の事を思い浮かべながら、自分でターンを決めてみる。
『まあ……悪くない』
鏡の中に綾波の微笑みが見える。
「それだけ?……もっと何かないの?」
拗ねた様に甘い声で聞くと、綾波は後ろから抱き締めて来て耳元で囁くのだ。
『世界中のどんな美女よりも、綺麗だ……』

