この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
eyes to me~ 私を見て
第60章 歌姫の覚悟

はまじろうは更に間を詰めて行く。目にも止まらぬ速さで右足から踏み込みパンチを繰り出し、真理の頬を掠めた。
「おお――っ」
ギャラリーがどよめいた。
触れもせず、そのパンチは真理の頬に小さな傷を負わせた。
つつ、と血が目の下を伝う。
「は……速い!」
真理は驚愕の眼差しを向けながら、尚も激しく手数を出してくるはまじろうの拳を腕で防御する。
「剛さん――」
美名は胸の前で手を握り、はまじろうを見つめていた。
二人の拳がぶつかり合った瞬間、綾波は言い放つ。
「お前には……いや、誰にも美名は渡さん」
「――テメエ、やっぱり」
真理が小さく叫ぶ。
堺は夢中でシャッターを切っていたが、ふと違和感を覚えカメラを構えたまま周囲を見渡した。
ギャラリーの反応が、先程とは少し違っている様に見える。
皆、スマホや携帯を手にヒソヒソ話をして、対決している二人ではなく、違う方に気を取られていた。

