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第63章 片恋の終わり

｢さ――て、野村もそろそろ出動するぞ？｣

　祐樹が良く通る声で言葉をかけると、野村は睫毛の長い瞼をゆっくりと開いた。祐樹を見て、時計を見て、亮介と三広を見つめると、やっと聞き取れる程の声で呟きながらノソリと立ち上がった。

｢……リハが終わったら……本番前にまた寝なくちゃ……｣

｢どんだけ寝るんだよお前｣

　祐樹がケラケラ笑って両手首をぶらぶらさせる準備運動をしていると、スマホが振動しながら光っているのを見つけた。

　手に取った途端、祐樹の目の色が変わる。

｢さ――て、じゃあ俺ら、先にやってるぜ｣

　亮介は他の二人の肩を抱きながら祐樹に声を掛けた。

　祐樹はスマホを耳に当てたままで亮介に頷く。